円安で給料は上がる?上がらない? | 円安と給料の関係を分かりやすく図解

世界で働く

2022年のはじめから、毎日ニュース等で見ない日はない程言われている、「円安」。

そして「インフレ」や「給料が上がらない日本」等も、働き盛りの世代には無視できないトピックでしたね。

ぶらっくべあ
ぶらっくべあ

なんか日本経済オワコンって言われるけど、どうしたらいいの?

とらうと
とらうと

外資系に転職したらドル高で給料上がる!?

ぐーす
ぐーす

経済の話は難しくてよく分からないのよね・・

と、先行きが不安になった方も多いのではないでしょうか?

では、現在の円安が中長期的に見て私たちの給料にどのように影響するのかを考えてみましょう。

この記事を書いた人

うりです。

海外在住期間を経て、外資系市場調査会社にてアナリストとして6年半勤務。

消費財市場や経済、消費者の動向などを調べてレポート発表していました。

また、ビックサイト等で開かれる展示会でプレゼンをすることも。

うり
うり

経済の話は難しいから、分かりやすく解説しますね

円安は企業の業績にどう影響する?

company performance

給料が上がるか、上がらないかは会社の業績に関係する、これはクリアですよね。

円安の影響と言っても、実はプラスの影響が色濃く出ていて儲かっている企業もあれば、マイナスの影響が色濃く出ていて業績悪化している企業もあります。

それでは、円安の影響が企業の業績のどこにどのような影響を与えるのか、見てみましょう。

円安の影響が出る箇所は1つじゃない

企業にとって、売上が上がる、上がらないは重要な項目ではありますが、売上増=業績アップ!という単純な話でもありません。

あまり話を難しくしないために細かいことは省きますが、現在の円安は日本企業から見ると、反対方向に働く2つの影響があります。

日本企業への円安影響

1:円安・原材料高によるマイナス影響

2:円安・海外売上増によるプラス影響

順番に解説していきますね。

1:円安・原材料高によるマイナス影響

impact of weak yen - 1. cost up

2022年原料価格の高騰が話題になった小麦を例にして考えてみましょう。

小麦と言えば、パンの材料ですね。

1トンの小麦を企業が買うのに$500かかるとします。

ドルベースの金額が同じ$500であっても、

1$ = 100円で取引をするのと、1$ = 150円の円安状態で取引をするのとでは、

日本企業が支払う円建ての金額は、それぞれ 50,000円/トン、75,000円/トンと大きく異なりますよね。

うり作成

これが、円安による原料コスト増と言われるものです。

うり
うり

小麦の場合には円安影響以外にも、そもそも昨年北米で小麦が不作だったことや、ウクライナ情勢などもあって、原料の価格は信じられない程上がりました。

詳しく知りたい方は、日清製粉グループが分かりやすいページを作成していたので、ご参考になさってください。

2:円安・海外売上増によるプラス影響

今度は、海外での売上が円安でどのような影響を受けたかを考えてみましょう。

海外でも人気の日本ブランド、ユニクロのウルトラライトダウンを例に挙げてみましょう。

アメリカのユニクロで、女性用ウルトラライトダウンは定価約$70でした。

1$=100円の時に売れた場合は、日本円換算で1着につき7,000円です。

しかし、1$=150円の時に売れたら、1着10,500円の売上になるのです。

weak yen impact 2 : increase in overseas sales
うり作成
うり
うり

購入する人の出費は同じなのに、企業にとっての売上はすごく多くなるね!

プラスとマイナスのどちらが大きいか

ここまで見てきた中で、円安が企業の業績にもたらす影響には、2つの方向があることがお分かりいただけたかと思います。

ぶらっくべあ
ぶらっくべあ

それは分かったけど、じゃあ結局円安は企業の業績にとっていいの?悪いの?

うり
うり

ケースバイケースで、企業ごとに異なります!

多くの日本企業は、上の影響のどちらも受けることになるので、結局はラス影響とマイナス影響のどちらが大きいか、という部分が焦点になります。

原料の海外輸入分が多く、販売は国内メイン、という企業は、マイナス影響が色濃く出て業績不振でしょうし、

反対に原料は国内調達が多く、海外売上高がすべての売上の半分、という企業はプラス影響が色濃く出て2022年は潤っていることでしょう。

これについては、2022年の冬のボーナスの予測で専門家も「企業間格差」を指摘しています。(ボーナスが上がる企業と上がらない企業の格差が開くということ)

賞与の企業間格差が鮮明に。海外展開している大企業では円安の進行により 為替差益が発生する一方、中小企業では円安・資源高による原材料コスト増が収益を圧迫

出典:株式会社日本総合研究所 リサーチ・アイ No.2022-055「2022年末賞与の見通し―2年連続で増加も企業規模間格差が鮮明に」

円安でなぜ給料が上がらないの?

それでは皆さん実際に、今年の冬のボーナスいかがでしたか?

コロナ禍の苦しい数年を乗り越えて、今年はようやく増えた!という人も中にはいるのではないでしょうか。

ぐーす
ぐーす

うちの会社は海外売上が好調と言っているけど、なぜ社員の給料は上がらないの!?

一方で、「海外での売上が好調と聞いているけど、ボーナスには反映されていないの・・!?」とガッカリした人もいるかもしれませんね。

特に日系企業では業績が良い時でも給料に反映されにくいと言われており、その理由を簡単にご説明します。

日本企業が円安利益を給料に反映させづらい4つの理由

日系の企業が業績の良い時でも給料が上がりづらいとされているのには、いくつか理由があります。

1:原料高でも値上げしにくい文化

2:「攻め」より「守り」が重視される文化

3:終身雇用制

4:人材の流動性が低い

順番に解説をしていきます。

1:原料高でも値上げしにくい文化

質の良い商品が低価格で出回る日本、しかも1つのブランド/メーカーからではなく、それが複数存在するので競争が働きます。

例えばコンビニ食パン。

2022年春の輸入小麦の政府売渡価格が17.3%アップしたのに対して、主要な食パンが7月1日出荷分から値上げを実施しましたが、値上げ幅は輸入小麦の値上げ幅よりずーーっと小さいものです。

2022年7月に値上げされた主な食パン
企業名商品名値上げ幅
山崎製パン「ロイヤルブレッド」、「超芳醇」、
「ダブルソフト」、「ふんわり食パン」など
平均8.7 %
敷島製パン「超熟」など
slice bread 2
平均5.4 %
フジパン「本仕込食パン」 など
平均 6~8%
出典:山崎製パン株式会社敷島製パン株式会社フジパン株式会社
うり
うり

これだけ安くて美味しい食パンがあふれている中で、2割値上げしてしまったら「他のパン買おう。お米買おう。」と思うものね・・。

つまり、円安のマイナス影響を、消費者に全て転嫁することはできず、企業が「損をかぶって」いる状態なのです。

そのため、仮に海外売上が好調で利益が出ていたとしても、国内販売の「損」をカバーすることにその利益が優先して使われてしまうのですね。

ぶらっくべあ
ぶらっくべあ

社員よりお客様、という日本の文化も強く影響していそう

2:「攻め」より「守り」が重視される文化

円安で海外売上が増え、潤っている企業の場合でも、円安影響については「棚ぼた的」収益増と考えて、「業績アップ=社員への還元」に繋げない企業はたくさん存在します。

実際に円安で収益が増えたとしても、その翌年円高で逆に収益が圧迫されてしまう場合もあるので、そのような場合に備えて企業としては「備え」を作っておきたいのです。

うり
うり

これが、「新製品を発売したら大ヒットした」という売上増だったら、開発や宣伝、販売に携わった社員をねぎらう意味でも給料に反映されやすいだろうけどね。

また、円安のピークで1$=150円を叩き出したとしても、その日に売れたものがその日のレートで収入になるわけではなく、数ヶ月分の売上を、その期間の平均的なレートで日本円に替えて最終的な売上とするため、私たちが思っているほどの影響が出ない、ということもあります。

3:終身雇用制

commuters in Japan

「攻め」より「守り」が重視される企業文化にも関連しますが、日本企業は今でも終身雇用制を採用している会社が多く、経営が圧迫された時にも簡単には人を切れない、という背景が存在します。

実際コロナ禍でも、海外の企業と比較して、厳しい経営状況の中でもリストラをしなかった日本企業は多いです。

いざと言うときに社員を守るだけの体力を温存する必要がある = 円安のようなラッキー要素はなるべく給料に反映させたくない

という訳ですね。

うり
うり

いいことに思える反面、今回のように円安で業績が良くても給料が上がらなかったり、社員が転職しずらかったりと問題もあります。

4:人材の流動性が低い

そして、終身雇用制の結果でもありますが、日本の人材市場は、特に日系企業の場合には人材の流動性が低いことも特徴です。

うり
うり

つまり、「転職してより良い条件の会社に移動する」ということが一般的ではないということね。

こちらも一見いいことのように思えますが、実は企業側からしてみると、「給料を上げなくてもすぐに人は離れていかない」という甘えを作る理由になります。

円安で給料が上がらないなら、転職もあり!?

ここまで見て来たように、2022年の円安で良い業績を出していても給料が上がらない!という場合には、企業の文化や体質が関係している可能性は大いにあります。

一般的に、外資系の企業文化は日系と比べて人の移動が激しいため、業績がいいと社員に還元してES = Employee Satisfaction (社員満足度) を上げようとする傾向が強いです。

うり
うり

私が以前に勤めていた外資系企業では、ボーナスの算定基準に「業績連動部分」が明記されていて、そこそこ大きな割合を占めていました。

今年の冬のボーナスが思ったより少なかったな・・という場合には、社員還元率の低い企業文化が影響している可能性もありますので、転職を視野に入れてみるのも一つの手です。

外資系企業はハードルが高いな、と思っている方がいるかもしれませんが、外資系企業であっても日本支社ではほとんど英語力が必要とされない場合もあります。

また、この円安ドル高で同じ仕事であっても外資に移っただけで給料が大幅に上がったという話も2022年にはよく目にしました。

ご興味がある場合には、下の記事で「外資系転職」をリアルに、かなり赤裸々にご紹介していますので、ぜひ併せてお読みください!

参考文献

GLOBIS知見録「為替変動の影響は決算書のどこに表れる?」

第一生命経済研究所 「なぜ、実質賃金はマイナスなのか?」

株式会社日本総合研究所 リサーチ・アイ No.2022-055「2022年末賞与の見通し―2年連続で増加も企業規模間格差が鮮明に」

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