モンテッソーリ教育とは? 実体験から考えるモンテッソーリ保育園に通ったメリット・デメリット

バイリンガル育児

近年教育に興味のあるママ・パパから注目を集めている「モンテッソーリ教育

ここ1,2年では、私立の幼稚園や小学校だけでなく、公立や認可保育園/こども園でもモンテッソーリ教育を取り入れる施設が出てきて更によく聞くことになりましたね。

通っている園が突然「モンテッソーリ教育を取り入れます」という方針になった、という方もいらっしゃるのではないでしょうか?

本記事では、40年以上運営の実績を持つモンテッソーリの保育園に娘が通っていた経験、また日本のモンテッソーリ保育園からカナダのモンテッソーリ・プリスクールに転園した経験を通じて感じた、モンテッソーリ保育園の良かったところと逆にモヤりとしたところをご紹介します。

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魅力的な点、心配な点を理解して、それぞれのお子さんに合うか合わないかを判断する材料にしていただけたら嬉しいです。

モンテッソーリ教育とは?

モンテッソーリ教育とは、イタリアで初の女性医学博士の一人となったマリア・モンテッソーリが提唱した教育法です。

自己教育力 (auto-education)」ー 「子どもは自らを教育する力を持っている。自発的な発達をサポートするように設計された環境の中で。

という理念に基づき、子どもが自ら学んでいく環境を整えることや、大人の関わり方を中心にその教育法が広まってきました。

0歳~6歳の乳幼児期が最も重要な位置づけとされているため、幼児教育に取り入れられることが多いですが、モンテッソーリ博士はもっと長い期間の教育法として提唱しており、海外では小中学校の教育にも取り入れられています。

モンテッソーリ教育のエッセンスは、「自己教育力」「敏感期」「環境(活動)」にあると言えます。

自主性 – 「自分でやるのを手伝って」

自己教育力」ー つまり自主性は、モンテッソーリ教育の根幹となる部分です。

モンテッソーリ博士は、どうすればこの子どもの「自己教育力」を最大限に発揮させられるか、という方法論として、適切な「環境」そして「教育者の関わり方」が不可欠であると唱えました。

モンテッソーリ園というと、子どもの背の高さの棚に「おしごと」が並べられていて、子ども達が好きな「おしごと」を自分で選んで自分のテーブルに持っていき取り組む、終わったら片付ける、という様子を思い浮かべる方が多いかと思いますが、その教室の作りがこの「環境」の最たるものです。

モンテッソーリの施設で、「おしごと」をする時間に例えばぬいぐるみやブロックがぐちゃっと入れられた箱が教室の中にあるということは考えられません。

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実際に私も娘が通う日本のモンテ園とカナダのモンテ園に「おしごと参観」に行ったことがありますが、「おしごと」の時間に教室に足を踏み入れるとそこは、日常生活とは次元の違う「整備された空間」「秩序の整った空間」。少し異質な感じがするほどでした。

同じ部屋で絵本の読み聞かせやお歌など、普通の園と同じようなカリキュラムも行われますし、そういった時間は子ども達もはしゃいでいたりなのですが、「おしごとの時間」だけは特別なのです。

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娘と同じクラスのまだ小さい子が泣きながらお母さんに連れられてきても、上靴に履き替えて一歩「おしごとの時間」の教室に足を踏み入れると、すっと泣き止み「おしごと」を取りに向かう光景は本当に衝撃的でした。

教育者(大人)は、子どもが自発的に習得していくのを手助けするために存在します。

子どもの発達段階を正しく理解し、時には適切な「おしごと」を提案し、子どもがまだやったことのない「おしごと」に初めて取り組む時には、最初に先生がやって見せる「提示」を通じて環境と子どもを結び付け、その教具を通じて子どもが自発的に学んでいくことを促します。

6つの「敏感期」

モンテッソーリ博士は、子どもは発達段階によって興味・関心が移っていくことを発見し、これを「敏感期」と呼び体系化しました。

敏感期には、「秩序」「運動」「言語」「文字」「数」「感覚」「文化」があるとされていて、例えば「感覚」の敏感期は0歳~6歳ごろと長いですが、特に乳幼児前期の0歳~3歳には視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚の五感をフル活用してものごとを吸収していく時期です。

この時期には、例えば蛇口から出る水でずっと遊んでいる砂場が大好き、音の出るおもちゃをずっと鳴らして聞き入っている、等の動作に物凄く集中する様子などが見られます。

環境 – 様々な「活動」の分野

「敏感期」は、ある特定のことに対しての興味が高まるだけでなく、吸収力もとても高まります。

例えば、3歳~6歳の時に、やたらと会話の中に数を入れたがる時期というのがあります。

「100個くらい食べちゃった」「クラスのおともだち25人」「10回言ったよ!」など。

モンテッソーリ園では、先生が「数の敏感期」に気づいてくれると、例えば「ゴールデンビーズ」のような、算数教育のおしごとを新しく提示してくれたりします。

視覚的に数をとらえるようデザインされたこの教具で、指示された数字を作るのを繰り返していくうちに、9999までの数字がスッと吸収されたりするのです。

ちなみに日本では「10000までの数」は小学校2年生で教わる内容で、この時期になると数の敏感期を脱しているので、「勉強」する必要があり、苦戦する子が続出するのです。

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感想(5件)

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実生活でも、「数の敏感期かな?」と思ったら、この時期にお小遣い制や足し算など導入してみると、スムーズに受け入れてくれるかもしれません。

数字以外でも、まさに幼児期(3~6歳)においては、生まれてからの間に無意識に吸収した様々な事柄を、意識的に整理・秩序化していく時期として、「日常生活の練習」「感覚教育」「言語教育」「算数教育」「文化教育」5つの教育分野を用意して、子供の「自己教育力」を発揮させる環境を整えます。

日本モンテッソーリ教育綜合研究所 ページを元に作成

保育園でのモンテッソーリ

それでは、モンテッソーリ教育を導入している保育園は、他の保育園とどのような違いが見られるでしょうか?主な点を3つ挙げてみました。

✓おしごとの時間

✓縦割りクラス

✓資格を持った先生

「おしごと」の時間

前段で述べたように、「環境」はモンテッソーリ教育を取り入れる上で最も大切な要素です。

モンテッソーリ教育を導入している保育園の多くは、モンテッソーリ教具を導入したり、教具やおもちゃを置く棚、テーブルと椅子のデザインや配置をモンテッソーリ教育が提唱する形にしたりしています。

敬虔なモンテッソーリ保育園では、「おしごとの時間」を他の活動とは区切って導入している園もあります。

縦割りクラス

モンテッソーリ保育園では、3歳~6歳は縦割り保育で他の年齢と一緒に活動をします。

縦割りクラスなので、下は上を見て真似して育ち、上の年齢の子は小さい子をいたわり、お世話をしてあげたり、「おしごと」を観察させてあげたり、ちょっとした手助けをしてあげたりします。下の子に対してこういった「お兄さんお姉さん」をすることで優れたリーダーシップを発揮する機会にもなります。

よく、モンテッソーリ園の説明会などで「うちの子がおしごとの時間の間1時間もおとなしくしているはずがない。」と質問をする保護者の方がいます。

娘は家でずーっと喋っている子だったので、私もそう思っていました。

しかし、例えば20人のクラスの中で過半数を占める、15人の年中さん年長さんが落ち着いておしごとに取り組む様子を毎日見ていると、不思議なことに5人の年少さんもそれを真似するのです。

先生方

モンテッソーリ教育が世界中に広がっていく中、教育者の質の重要性を認識したモンテッソーリ博士は、AMI 国際モンテッソーリ協会において教員養成コースを開設し、資格取得制度を整えました。

きちんとしたモンテッソーリ保育園では、一定の割合でAMIディプロマを取得された先生が配置されているはずです。

約2年間の体験を通じて

モンテッソーリ保育園が合うか合わないかは、結論を先に言ってしまいますが「子どものの特性によります

これはお子さんをモンテッソーリの保育園に通わせるかどうかを考える際に、念頭に置いておいてほしいことです。

うちの娘にはどんぴしゃで、モンテッソーリの環境で幼児期を過ごして良かったと思っています。

一方で、「こういう子にはしんどいだろうな」と思う部分も確かにありました。

実際に2年間に渡って、日本とカナダでそれぞれモンテ園に通ってみて考えたメリット・デメリットをご紹介します!

メリット

興味・関心分野への没頭

「おしごとの時間」の中であれば、自分がやりたいおしごとを選んで好きなだけ没頭することができます。

ピッチャーからピッチャーへ、水の移し替えがしたかったら、永遠にしていてもいいのです。
(ただし最後はお片付けまできちんとする)

MY STORY

娘が2歳の時、入園することになったモンテッソーリ保育園の入園前面談へ伺い、「おしごとに集中していて本人が続けたいという場合には、給食を食べないこともあります。」

「!?!?!?!?!?!?!?!?」

2歳と言えばようやく赤ちゃんを卒業してくるかなくらいの時だったので、栄養を取る機会をスキップするというお話に目玉が飛び出るほど驚きました。「すみません、食事抜きということですか?」

そして1年半通ってその園の先生方を信頼しているからこそ、今だからこそ言えるけど、当時は正直「この園大丈夫?」と思いました・・。

結局、実際に娘がご飯を食べずに帰ってくる日は一度も無かったです。

ただ、それだけモンテッソーリでは「集中」を大事にするということなのだなと、今なら理解できます。

自分も人も大事にする

モンテッソーリ教育を部分的に取り入れている園でよく見かけるトラブルが、「子供の自主性を大事にする」という大義名分の下「やりたいようにさせる」・・つまり「放任主義」に繋がっているのではないか、ということです。

例えば子供同士の喧嘩があっても「自主性を大事に」して大人が介入しない。

クレヨンで床に絵を描いている子がいても「自主性を大事に」して注意しない。

これは、モンテッソーリ教育を理念まで理解していないと言えるでしょう。

娘が通っていた園では、どちらの園でもしっかり𠮟ってくれていました。

確かに自主性や自分の気持ちは大事にします。

しかし、自分の気持ちが大切なように、お友達も自分の気持ちが大事、そこから『リスペクト』『歩み寄り』を学んでいきます。

娘の場合は、「自分を大切にする」ことを学んだあと、今まさに「自分を大事にするように人を/物を大事する」ことを学んでいる真っ最中です。

娘は特性(Strong-Willed) があり、この段階はなかなか苦戦していますが、家庭と園とで連携をとって取り組んでいます。

気持ちのコントロール

モンテッソーリ教育では、集中して物事を深めていく時間を大切にします。

大人でも、指先の細かい作業に30分くらい集中すると、なんだか頭がすっきりすることありますよね?

子ども達は、おしごとに没頭すると心がすっきりすることを学びます。

おしごとを通じて、気持ちが落ち着かない時に、自分を落ち着ける手段を知ることができるのです。

カナダに来て1週間くらいの時に、航空便で届いた「はさみ切り」のお仕事に、娘は30分くらいずっと没頭していました。

その後すっきりとした顔をしていたので、移動のゴタゴタや新しい環境などでソワソワした心を整えたかったのだと思います。

異年齢との関わり

特に自分より小さい子に対して、優しく接する、教えてあげる、譲歩してあげる、などが自然と身に付きました。

デメリット

協調性がなくなる?

これはモンテッソーリ園のデメリットを探した際には、一番よく言われることかと思います。

「自分がやりたいこと」を自分で選択して深めていく、という点からそのように捉えられるというのは理解できますが、2年間子どもが実際にモンテッソーリ保育園に通った経験から、そこまで心配することはないのかな、と思います。

確かに「おしごとの時間」には自分がやりたいお仕事に取り組みますが、保育園に預けている時間のうちせいぜい1~2時間のことです。

その他の時間には、横割りクラスでリトミックをしたり、体操をしたり、お歌を歌ったりと集団行動をする場面も多くあり、協調性は十分に身に付きます。

一方で、例えば体操の時間にどうしても気分が乗らなくて参加したくない、ということがうちの娘の場合はあったのですが、その際には無理やり参加させたり強く叱ったりすることはせず、「見学でもいいよ」と子どもに寄り添ってくれたのは大変ありがたかったです。

そのような点では協調性は少し緩めかもしれませんが、「牛乳を飲めないのに給食の牛乳を無理やり飲ませる」レベルの厳しさは今の時代不要ではないでしょうか。

「時間で区切る」は練習が必要?

上述のように、特に保育園という時間も長い場合には、集団行動をする場面も多くあり協調性も鍛えられますが、何か作業に取り組んでいる時などは集中する訓練がされているので、行動の切り替えは少し苦手になるかもしれません。

娘も出かける前など「あとここ少しだけ作ってからでもいい?」と永久に言っている時があります。

動き回りたい子には不向き?

これは園見学の際に見る/聞いてみるべきかと思いますが、保育時間によって、立地によっては、午前中いっぱいを「おしごとの時間」に充てていて、身体を動かす遊びの時間を十分にとれない可能性はあります。

しかし、娘が通っていたモンテッソーリ保育園では、午前中の「おしごとの時間」の後と、夕方にお迎えを待つ間園庭で力いっぱい走り回れたので、体力の有り余っていそうな年長さんのお兄さんたちも「おしごとの時間」には落ち着いておしごとに集中していました。

日本社会には合わない?

日本社会には合わないという話も聞くことがあります。

モンテッソーリ保育園から公立小学校への移行については、小学校入学というのはどこから来るにしても大きな変化だと思うのでそこまで心配がいらないのでは?と思います。

受験戦争、偏差値社会との合う・合わないを考えるのであれば、確かに価値観が合わないと言えるでしょう。しかし、保育園卒園後日本の小学校を挟むのであればそこで日本社会における「勉強」も学びますので、「保育園でモンテッソーリを選択するか?」という悩みであればこちらもさほど思い悩まなくともよいと言えます。

「環境」「教育者」は見極めを

まとめ

✓モンテッソーリ教育は子ども一人ひとりを尊重した素晴らしい教育法である。

✓一方で、日本社会との価値観の違いは確かにあり、保育園のカリキュラムの中でそれを学べる機会があるかは確認する方が良い。

✓身体を動かすのが好きな活発な子は、園での1日のスケジュールをチェックし、身体を存分に動かせる時間があるかを確認する方が良い。

参考

Association Montessori Internationale (AMI)

公益財団法人 才能開発教育研究財団
日本モンテッソーリ教育綜合研究所

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