記事をご覧いただきありがとうございます。本日は、SDGs(サステナビリティ・ディベロップメント・ゴールズ = 持続可能な開発目標)17項目の1つ目、「貧困をなくそう」について、「小学生にも分かりやすく」を目指して書きたいと思います。長くなりそうなので、前後編に分けて記事を書きたいと思います。
後半の記事では、国や企業の具体的な取り組みや、私たちがいち個人として何ができるかについて解説していきます。
そもそも貧困って何?
貧困は貧乏と同じ?お金がないっていうこと?この前おもちゃ屋さんに行った時かっこいい自転車があったんだけど高くて買ってもらえなかったんだ。ぼくの家も貧困なの?
お金がないということも貧困のひとつだね。
貧困にも種類があるのだけれど、生きていくのに必要な最低限のもの、例えば水や食べるもの、着るもの、住むところに困っているような場合を貧困と考えることが多いよ。だから自転車が買えなくても、毎日のご飯や寝るところがあって、服を着替えて学校に行けるのならば貧困とは言わないね。
それにお金の話だけではなくて、必要な時に病院に行けなかったりとか、小学校に行けないという状況も貧困と考える場合もあるんだよ。
・poverty : 英語で「貧困」。リンク先で「発音を聞く」を押して聞いてみてね。
・国際貧困ライン : 世界銀行(※)が定める、最低限の栄養、衣類、住まいのニーズが満たされなくなるというレベル。1日当たり1.9ドル(およそ200円)での生活が国際貧困ラインとされています。
・絶対的貧困:最低限に必要なもの(きれいな水、食べもの、着るもの、住むところ)に困っていること
・相対的貧困 :その国の一般的な家庭よりもずっと少ない収入で暮らしていること。
はい!「国際貧困ライン」について質問があるよ。
毎日200円あれば、ぼくの大好きなぶどうパンが買えるよ!それなのに貧困なの?
食べるものだけじゃなくて、服とかも含めて1日200円なんだよ。服や文房具、トイレットペーパーなど、生活に必要なもので家族が1か月にどれくらいの買い物をしているか、1日当たりで考えると何円くらい必要なのか考えてみよう!
(参考)
食べるもの以外にも、生きていくためには色々なところでお金が必要なんだね。これを全部考えたら、とても1日200円では生活していけないや。
でもさ、この1日200円以下という「国際貧困ライン」を下回って生活している人たちなんて本当にいるの?
貧困に苦しんでいる人たちはたくさんいる?(データ世界と日本)
普段の暮らしの中で、今日食べるものに困っている、というほどの貧困に苦しんでいる人を見たことがありますか?
そうそう見かけませんよね。それはなぜか?
それは、まず第一に日本が世界的にみると豊かな国であるからです。理由があって住むところがなかったり仕事がない場合には、「国」が生きていくのに最低限必要な生活を支援してくれる仕組みがあるのです。
しかし、世界の中にはまさに今この瞬間も「食べるものがない」「住むところがなくて寒くても外で寝るしかない」という人がいるのです。
世界の人口が100人だったとすると、どれくらいの人が貧困に苦しんでいるのでしょうか。下の図のオレンジ色の人の数は、2010年、2019年、2020年の100人世界の中で先ほど見た「国際貧困ライン」より低い水準で暮らす人の数です。
ぼくの学校でも全校朝礼でこんな感じで並ぶけど、1列10人で並んでいたら、1列の中で1人か2人は貧困に苦しんでいるという割合か・・思っていたよりたくさんいるんだね。
ぼくの周りにはこれほどいないと思うんだけど、いったい貧困に苦しむ人たちはどこにいるの?
絶対的貧困に苦しむ人はどこにいる?
世界地図の地域ごとで考えると、アフリカや南アメリカ、そして日本が位置するアジアの中でも南アジアと呼ばれる地域では貧困に苦しむ人たちが多く暮らしています。
下の世界地図では、色の濃い国ほど、「国際貧困ライン」より低い水準で暮らす人の数が多い地域です。
ただし、こちらの世界銀行が紹介しているデータでは、調査を行っていない国のデータはすっぽり抜けてしまっているので、もしもっと詳しく見てみたい場合には、こちらのWorld Poverty Clockという、ドイツの団体が作成している貧困マップを見てもらった方が分かりやすいと思います。(後日見方など追記予定)
絶対的貧困に苦しむ人たちについてもっと知る(おすすめ書籍)
日本から遠く離れた国々では、毎日の食べるものもあるかないかの暮らしをしている人たちがいるのか・・こんなことを言っていいのか分からないけど、そういう暮らしがどんなものなのか、想像できないな。
貧困に苦しんでいる国では、例えばぼくと同じ小学生はどんな暮らしをしているんだろう?
ひとつ、おすすめの本があるから紹介させてね。日本で小学校に通う子が、遠いガーナというアフリカの国で暮らす同じ年の男の子に思いを巡らせているお話で、谷川俊太郎さんという有名な詩人の方が書いたよ。
(Amazon紹介文より) 世界中で約2億1500万人もの子どもが、自分の意思に反した労働を強いられています。 遠く西アフリカのガーナでカカオを収穫している「そのこ」と、日本にいる「ぼく」との日常を描いた谷川俊太郎さんの詩が絵本になりました。
ぼくと同じ年くらいの子供でも、学校へ通わずに家族の生活のために毎日働いているなんて・・でも勉強や宿題が嫌いだから、それをしなくていいのはちょっといいなぁ、なんてね。
あのねぇ。遊んでいるわけではないからね!勉強をするっていうのは、世の中のことを少しずつ知っていくためにすごく大切なんだよ。
例えば、日本だと字を書いたり読んだりするのはできて当たり前だけど、学校に行けないと文字の読み書きをする機会がほとんどない。アフガニスタンという国では、2021年でも15歳~24歳のうち半分近い人が文字の読み書きができないと報告されているよ。(※)
本や新聞を読んだりできないと、暮らしを良くするためのチャンスも限られてしまう。つまり貧困から抜け出すのがすごく大変なんだ。
生活のために学校に行くことができないまま大人になって、その人にまた子供が生まれても同じように子供のころから働かざるを得ないという、親世代から子供世代に貧困が受け継がれてしまうことを「貧困の連鎖」と呼ぶよ。
この貧困の連鎖は、実は日本でも大きな問題になっているんだよ。
ええっ!
貧困は僕たちが暮らす日本には関係ない話だと思っていたよ。だって学校に行かずに働いている小学生なんていないでしょ。どういうことなの?
(※)出典:ユニセフ Data Warehouse – Indicator: Youth literacy rate for 15-24 years
日本における「貧困」 – 相対的貧困
国の調査によると、
日本では、小学校の6年間と中学校の3年間は義務教育と国で決められているため、公立の学校へ通えば授業料はかかりません。2019年10月からは、幼稚園や保育園も、年齢によって無料となりました。もちろん授業料の他にも給食費や教材代などがかかりますが、生活が苦しい家庭には支援をする仕組みがあります。
しかし、義務教育で中学校を卒業した後、働き始めたら生活に困ることなく暮らしていけるでしょうか?
中学校を卒業してすぐに働き始めた人で大成功している人ももちろん中にはいます。しかし、国の調査(※)によると、学歴によって大人になって働き始めてからのお給料が全然違うということが分かっています。
大学を卒業してから働き始めた人(大学卒)と、高校を卒業してすぐに働き始めた人(高校卒)とでは、同じ年齢の時のお給料が、大学卒の人の方が一般的に高いのです。更に、その差は働き続ける中でも開いていき、例えば子供が義務教育を終える年齢に差し掛かる人が多い45歳~49歳の男性で見てみると、1年間に100万円以上差が出ます。
親のお給料の差によって、「高校(大学)に進学できる」「高校(大学)に進学できない」という選択が生まれ、そしてまた進学しなかった場合には将来の給料が上がりにくい・・と、世代を超えて連鎖していくのです。
SDGsでは、この状況をどうしようとしているの?
SDGsを作った国際連合では、SDGsの17の項目を発表した時に、「何を目指すのか」という具体的なゴールを発表しています。これを、「グローバル指標」といいます。また、「どうやって達成するのか」という「達成方法」も一緒に設定されました。
「貧困をなくそう」には、5つの具体的なゴールと、2つの「達成方法」が発表されています。
まずは日本の外務省が国際連合の発表を日本語にして発表したものをそのまま紹介します。言葉が難しいと思いますので、そのあと1つずつ簡単に説明をします。
具体的な5つのターゲット
1.1 | 2030年までに、現在1日1.25ドル未満で生活する人々と定義されている極度の貧困をあらゆる場所で終わらせる。 |
1.2 | 2030年までに、各国定義によるあらゆる次元の貧困状態にある、全ての年齢の男性、女性、子供の割合を半減させる。 |
1.3 | 各国において最低限の基準を含む適切な社会保護制度及び対策を実施し、2030年までに貧困層及び脆弱層に対し十分な保護を達成する。 |
1.4 | 2030年までに、貧困層及び脆弱層をはじめ、全ての男性及び女性が、基礎的サービスへのアクセス、土地及びその他の形態の財産に対する所有権と管理権限、相続財産、天然資源、適切な新技術、マイクロファイナンスを含む金融サービスに加え、経済的資源についても平等な権利を持つことができるように確保する。 |
1.5 | 2030年までに、貧困層や脆弱な状況にある人々の強靱性(レジリエンス)を構築し、気候変動に関連する極端な気象現象やその他の経済、社会、環境的ショックや災害に暴露や脆弱性を軽減する。 |
えっと・・・何を言っているのか全然分からないよ!小学生のぼくでも分かるように説明して。
もちろん!でも実は、難しい言葉を使っているだけで、今日ここまで学んできた内容を理解していたら、「なるほど」と思えることがほとんどだよ。簡単な言葉に直しながら説明していくね。
1.1は何を目指しているの?
はじめの目標は分かりやすく、「極度の貧困」を世界から無くそう、つまり、毎日の食べものや着るもの、住むところに困っている人たちのことは全員助けようという目標です。
「極度の貧困」という新しい言葉が出てきましたが、先ほどまで学んできた「絶対的貧困」とほとんど同じ目的で使われていると思ってください。国際連合と世界銀行とで、貧困ラインが少し違うだけですが、1.25ドルにせよ、1.9ドルにせよ、毎日の食べものや着るもの、住むところに困っている人たちであることは間違いありません。
1.2は何を目指しているの?
1.2以降は言い方が紛らわしくなっていきますが、「見えない貧困」を取りこぼさないためのターゲットのようです。たとえば1.2は「各国定義によるあらゆる次元の貧困状態」とありますが、これは国によって物価や賃金に差があり、貧困の線引きが異なるためですね。
例えば日本では、「絶対的貧困」で暮らす人たちはいなくても、「相対的貧困」で暮らす人たちはいて、この人たちの状況をしっかり知って、支援していく必要がある。そのため、日本(厚生労働省)では、「貧困線」というのを「相対的貧困」に合わせて設定しているんだ。
そして「全ての年齢の男性、女性、子供の(貧困の)割合を半減させる。」これは例えば、「中国の貧困率が1990年から2010年の間で66%から11%に下がった(データをページ下部に貼ります)」という、一国全体の結果で満足せずその中身を見ること、ということです。蓋を開けてみれば都市部で雇用が増え若者が流入、働く世代の貧困率が大幅に改善したとしても、その波に乗ることのできなかった地方のお年寄りが依然貧困に苦しんでいる、みたいな事態は良くないね、という、「誰も取り残さない」というSDGsの理念がよく反映されています。
1.3は何を目指しているの?
1.3は貧困層の人口を0にできないとしても十分な保証をしようというバックアップです。
1.4と1.5は何を目指しているの?
1.4と1.5は金銭の面において絶対的な貧困状態には無かったとしても、相対的に生活が困窮していたり、諸々の権利が制限されてしまったりすることのないように、という内容で、日本のような先進国にとってはこちらの方が潜んでいる可能性が高いように思えます。
前編まとめ
- 貧困にも種類があり、SDGsではまずは絶対的貧困(=毎日の食べるもの、着るもの、住むところに困る暮らし)を全員救おうとしている。
- 同時に、相対的貧困をなるべく減らして、地球上のなるべく多くの人が人間らしい暮らしをできるようにしていくことも大切。
後半の記事では、国や企業の具体的な取り組みや、私たちがいち個人として何ができるかについて解説していきます。
参考文献
世界銀行
- よくあるご質問(FAQs): 国際貧困ラインの改定について (2019年11月13日) https://www.worldbank.org/ja/country/japan/brief/global-poverty-line-faq
- 世界の貧困に関するデータ https://www.worldbank.org/ja/news/feature/2014/01/08/open-data-poverty
World Vision
- What is poverty? It’s not as simple as you think https://www.worldvision.ca/stories/child-sponsorship/what-is-poverty
総務省統計局
厚生労働省
- 賃金構造基本統計調査 – https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou_a.html
- 2019年 国民生活基礎調査の概況 – https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa19/index.html
UNICEF (ユニセフ)
- Data Warehouse – Indicator: Youth literacy rate for 15-24 years https://data.unicef.org/resources/data_explorer/unicef_f/?ag=UNICEF&df=GLOBAL_DATAFLOW&ver=1.0&dq=.ED_15-24_LR..&startPeriod=2016&endPeriod=2022
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